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今後の予定記事の目次です(適宜更新あり)

小児の変形矯正と骨延長
I はじめに
II 変形矯正や骨長の補正のためのツール
 1. 骨延長・変形矯正のためのツール
   a. イリザロフ法
     【参考】イリザロフ法の歴史
   b. その他の創外固定器
   c. 延長ができる髄内釘
   d. 骨端線閉鎖術(成長軟骨抑制術)に必要なツール
 2. 脚長差総論
   a. 脚長差について
    (1)脚長差の診断
    (2)脚長差の治療方針
      ①骨端線閉鎖術
      ②骨延長術
   b. 成長の予測のためのツール
III 疾患各論
 1. 先天性疾患に伴うもの
   a. 骨系統疾患(特に軟骨無形成症を中心に)
      軟骨無形成症の延長術<その1><その2><その3>
   b. 先天性四肢形成不全
   c. 片側肥大(先天性血管異常(クリッペルファイル病、複合血管異常etc)含)、片側萎縮
   d. 先天性内反足
   e. 先天性(発達性)股関節脱臼、ペルテス病などの治療後の遺残変形(主に脚長差)
 2. 成長発達に伴うもの
   a. ブラウント病
   b. 中手骨・中足骨短縮症
 3. 後天性の疾患に伴うもの
   a. 骨折後の変形・短縮(あるいは過成長)
   b. 感染症後の変形
   c. 代謝疾患(くる病など)
   d. 腫瘍類似疾患(オリエー病、線維性骨異形成症、神経線維腫症など)
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テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

下肢の成長予測について

こんにちは。
今日の話題は少し専門的ですが、ヒトの下肢長(上肢長や身長も)はある程度予測ができるというお話です。

2000年にアメリカのPaley先生が発表された論文は大変インパクトがあったと思います。
ざっくり言えば、成長段階のヒトの成長終了時の下肢長はその時の長さに年齢に対応する係数をかけると求めることができるというものです。
その係数をマルチプライヤー(Multiplier)と呼びます。

その係数の表がこれです。


つまり、生まれた時の下肢長が15センチだったとすると、男の子の場合、生まれた時のマルチプライヤーは5.08ですから、成長終了時の下肢長は

15 × 5.08 = 76.2 センチ

ということになるのですね。
それなら背が高くなりたい一心で一生懸命牛乳を飲んだり、鉄棒にぶら下がったりしたのはなんだったんでしょうか ^^;
それはともかく、このデータが正しいとすれば身長はオギャーと生まれた瞬間に運命で決まっているのですね。

かといって栄養が不足したり、重量挙げを成長期にし過ぎたりなど、成長を妨げるようなことをすれば、負の効果はきっちりでるのではと私は考えています。
従って成長期はしっかり栄養を摂って、適度な運動を心がけましょう!

話が少しそれましたが、この表を使えば、ある年齢での下肢長から成長終了時の下肢長を求めることができますので、今後の成長量を予測できます。
これを応用すれば、将来の脚長差も予測でき、将来どれくらいの長さの骨延長術が必要になるのか、あるいは骨端線閉鎖術を行うならどのタイミングが良いのかも予測できます。

この方法は1回のデータで予測が可能なので、初診の方に今後の治療方針を大まかに伝える際にとても重宝しています。

しかしここで私が”大まかに”と言ったのは、やはり1回のデータでは正確さに不安があるためです。

Moseley先生はStraight-line graph(ストレイトライングラフ)というグラフに各成長段階での下肢長のデータをプロットして何度かのデータを直線で繋ぐことで将来の脚長差の予測や、骨端線閉鎖術のタイミングを導き出す画期的な方法を発表しました。
このようなグラフです。


これはマルチプライヤーよりもずっと以前から用いられてきた古典的方法ですが、私は特に骨端線閉鎖術の時期の予測において一番信頼して使っています。
しかし、複数回のデータが必要なのが欠点ではあります。
すでに骨端線閉鎖術のタイミングに近い年齢で初診で、しかも過去のデータがない方には使えませんが、大抵の場合、骨端線閉鎖術のタイミングまで数年あることが多く、その間に半年に一度くらい来院していただいてデータ採りをしていくと、回数が多くなるほど誤差が少なくなり、より正確に予測することができます。

この方法で予測して骨端線閉鎖術を行った症例は以前にこの記事でご紹介しました。

脚長差の予測には古来いろいろな方法が提唱されてきましたが、私は以上の二つの方法を使い分けています。
Multiplier法で大雑把に見積もり、正確な手術時期の決定などにはMoseleyのstraight-line graphを使っているのです。

最近(2018年7月)に私の方針は間違ってなかったと確信する論文がでました。

Timing of Epiphysiodesis to Correct Leg-Length Discrepancy: A Comparison of Prediction Methods
Makarov, Marina R.; Jackson, Taylor J.; Smith, Connor M.; More
JBJS. 100(14):1217-1222, July 18, 2018.


その骨子は、骨端線閉鎖術を行うタイミングを予測するのにはいろいろな方法の中でMultiplier法が最も不正確であったというものです。
やはり一つのデータからすべてを予測するのは無理があるのかもしれません。
しかしおおまかな予測を立てるのには大変有用ですので、今後も両者の方法を使っていこうと思います。

脚長差に対する延長術について

こんにちは。
前回、脚長差について長い方の骨端線閉鎖術の症例をご紹介しましたが、今日は短い方を延長するお話です。

症例は12歳の女児で、原因不明の右の大腿骨遠位の骨端線損傷(部分閉鎖)です。
外側だけが閉鎖しているため、正常な内側が成長するに伴い、徐々に外反変形が増強し、外観の変形に気づいて来院されました。
通常、外傷などの何らかの原因がなくこのようなことが起こることは稀です。
(このような骨折歴のはっきりしない骨端線損傷を骨端線損傷の有名なSalter-Harris分類ではV型と分類しています)

来院時の下肢全長のレントゲン像です。
図4_convert_20181123155249

来院時にすでに12歳になっていましたので女の子であることを考えると骨端線閉鎖術で対応するにはやや時すでに遅しの感じです。
また、この例では短い方に変形もありますので、長い方を短くすれば良いだけではありません。

従って、短い方の大腿骨の変形矯正と延長をイリザロフ法で行うことにしました。

ただ、この症例の場合は外側だけの骨端線早期閉鎖があり、まだ内側の骨端線での成長が見込まれましたので、今後の変形の更なる悪化を考慮しなければなりません。
今後の変形を予防するには外側の閉鎖した骨端線(骨橋といいます)を削って外側の伸びを期待するか、内側を閉鎖してしまうかどちらかを行わなければなりません。
今回は前者を選択しましたが、骨橋を完全に削るのは結構手技的に複雑な面があり、内側の閉鎖の方が確実性はあるかもしれません。
しかし内側を閉鎖した場合は大腿骨の遠位での今後の成長はまったく見込まれませんので、その分も余分に延長することが必要となります。

12歳7ヶ月で手術を行いました。
手術直後の外観です。
図6-a_convert_20181123155206
手術直後は変形も脚長差も術前のままですが、術後1週間くらいから少しずつネジを回して矯正・延長を行います。

変形矯正・延長が終了した時点での下肢全長のレントゲン像です。
図6-b_convert_20181123155230

変形が矯正され右下肢はまっすぐとなり、脚長差も解消され骨盤も水平になっています。
延長術は骨端線閉鎖術に比較すると、治療期間も長く、リハビリテーションも大変ですが、この症例のように延長術でないときちんと治すことが困難な症例もあります。

まずは治療開始時点でどのような治療法のオプションがあるか、それぞれの利点・欠点は何かをよく理解することが極めて重要です。

久しぶりに骨折の話題です!

こんばんは。
Dr.Kです!

今日は久しぶりに最近経験した骨折の話題です!

7歳半の女の子が鉄棒から転落し左腕を受傷しました。
すぐに近くの整形外科で診てもらったようなのですが、その医院の対応に不安があり、私にご相談がありました。
2〜3日後に千葉から来院されました。

女の子は上腕から手までのシーネ固定を受けていました。
痛みはかなり軽減しているようです。
血液の循環の障害や神経麻痺はなさそうです。

その時のレントゲン写真がこれです。


パッと見た感じでは一瞬正常かと思ってしまうくらい、転位の少ない上腕骨顆上骨折です。
しかし、前医ではきちんと骨折と診断され、シーネ固定されていました。

間違ったことはなにもしていないのに、親御さんが不安になるのはなぜでしょうか?

実は2週間後くらいに、偶然似たような症例のご相談がありました。
6歳の子どもさんが転倒して、肘を痛がり、近くの整形外科を受診されました。
レントゲン写真では異常ないとのことで、肘内障を疑われ整復操作を受けましたが、子どもさんを泣かせるだけの結果になったようです(よくある話です)。

翌日にも痛みは続き、肘も屈曲位のまま伸びなかったので再び受診し、大学病院を紹介されたようです。
大学病院での診察の様子を親御さんからのメールを直接抜粋してご紹介します。

レントゲンにて、ズレのない上腕顆上骨折と診断を受けました。
骨折箇所の説明はなく、出血がみられること(肘の部分でした)この出血で圧迫されて神経障害が出る心配があることを説明され、座った状態で半ギプス固定をしました。
90度よりかなり伸展した状態で、肘より手首が下側に垂れ下がる状態です。
三角筋の当て方も説明がなかったため、とりあえず手を保持する状態です。


レントゲン写真も送っていただきましたが、私が見れば明らかに上腕骨顆上骨折だなとわかる写真でした。
実際に診察はしておりませんので、固定がどのような角度でなされていたかはわかりません。
しかし、少なくともメールの内容からはそれほど間違ったことはされていないようです。

ご紹介した2例はともに転位のほとんどない上腕骨顆上骨折です。
治療の原則は保存的治療で、固定をするだけで3〜4週間で治ります。
実際にご紹介した2例ともシーネ固定(半ギプス)を受けており、概ね間違ったことはされていないようです。

ここで再度質問です!
なぜさほど間違ったことがされていないのに親御さんが不安になるのでしょうか?

実際にお会いしてお話をお聞きしたり、メールのやり取りをしているとその理由が明らかになってきました。

説明がまったくもって不十分なのです!

ご紹介しましたメールの文面にもありますように、肘をやや伸展気味に固定することは上腕骨顆上骨折の急性期ではよくあることです。
むしろ90度まで屈曲させると循環障害が出て、合併症を起こすリスクがあることが多いのです。
それを考慮して指の色などを見ながらやや伸展気味に固定したのだと推測します。
その後腫れがひくに従って徐々に固定角度を90度に近づけていこうと思っていたのでしょう。

しかし、それを患者さんにご説明しなければ、せっかく正しいことをやっていても不安を与えてしまいます。

上腕骨顆上骨折は最悪の場合フォルクマン拘縮という手の機能を喪失してしまうような後遺症を起こす可能性がある外傷です。
そのため、親御さんが心配してインターネットでいろいろ検索すると不安なことがどっさり出てきます。
それをも見越して、たとえ今回ご紹介したような軽微な上腕骨顆上骨折でもしっかり説明することが重要であると再認識いたしましたので、今回記事にさせていただきました。

脚長差の治療について(骨端線閉鎖術)です!

こんにちは。
Dr. Kです!

今回は骨端線閉鎖術のお話です。
骨端線閉鎖術ってあまりなじみのない言葉だと思います。

成長過程の小児の骨には成長するための部分があります。
通常、長管骨の場合骨の端の方にありますので、骨端線、あるいは成長軟骨板(epiphyseal plate)などと呼びます。

脚長差を治療するにあたり、短い方を伸ばしたいのか、長い方を縮めたいのかをまず決定する必要があります。
短い方を伸ばす骨延長術については別の項で詳しく述べますが、これはなかなか過酷な治療です。
治療期間もそれなりにかかりますし、リスクも比較的高くなります。
ただ、成長終了後に行えば、長さの差の補正が正確に行えますし、長い方に揃えるわけですから身長を犠牲にすることがありません。

一方、骨端線閉鎖術は骨が成長する軟骨部分の機能を停止させ、その部分での伸びが起こらないようにします。
通常は大腿骨遠位の骨端線か、脛骨の近位の骨端線か、その両者で行います。

この方法は骨延長術に比較すると、患者さんへの負担が少なく、治療期間もかなり短縮され、合併症も少ない治療になります。
ただし、この手術を行うタイミングが早すぎれば、もともと長かった方が逆に短くなってしまいますし、遅すぎれば期待したほどの脚長差の補正が得られないことになります。
したがって、骨端線閉鎖術の場合、何歳何ヶ月くらいで手術を行うべきかを評価することがとても重要になります。
つまり骨延長術よりは脚長差の補正の正確さは劣ることになります。
また短い方に合わせるわけですから、身長の面では不利です。

治療にあたっては、これらのメリット・デメリットを十分勘案した上で、脚長差の原因となった疾患の特性なども考慮し、医療者側と治療を受ける側とが納得いくまで議論することが重要です。

骨端線閉鎖術を行う場合、手術のタイミングを計算するのに私が一番愛用しているのはMoseley法です。
Multiplier法も大まかな予測を立てるにはとても有用ですが、データが蓄積されてくるとMoseley法の方が手術計画を立てる上では信頼できると考えています。
そのため、骨端線閉鎖術を治療のオプションとして考える際は、正確な予測を立てるためには少なくとも半年に一度くらいの経過観察でデータを蓄積することが重要です。

骨端線閉鎖術を行う方法はいろいろあり、それについてはまた別の機会に述べますが、私はステープル(かすがいのような釘です)を以前より愛用しています。

1例をご紹介します。

原因不明の脚長差で経過を診ていた男児で、Orthoradiographで骨長を計測できたのが11歳時点で4回の蓄積がありました。
11歳時の立位両下肢全長のレントゲン像です。
この時の脚長差は約3センチでした。
図3-a_convert_20181103125643

これまでの診察ごとにグラフにしていたものです。
計測法の詳細は成書に譲りますが、このグラフから11歳半ごろに大腿骨の遠位の骨端線閉鎖術を行えば、成長終了時に脚長差が解消されることがわかります。
図2_convert_20181112103356

16歳時の立位両下肢全長レントゲン像です。
脚長差がなくなり、骨盤が水平になっているのがわかります。
図3-c_convert_20181103125742




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プロフィール

Dr.K

Author:Dr.K
小児整形外科医のDr.Kです。
小児整形外科っていうジャンル、ご存知でしょうか?
こどもが病気になると小児科にお世話になると思いますが、手足などの運動器に異常がある場合、一般の整形外科にかかること多いですよね。
実は、こどもの運動器は単なるおとなの小型版ではなく、診断や治療に対する考え方がまったく異なることが多いのです。
まだまだ日本では認知度が少ない、希少種の小児整形外科医師の一人として小児整形外科をより広く知って頂けたらと思い、ブログを始めました。
私が日常よく遭遇するのは以下のような疾患ですので、話題の中心もそのようなものが多くなると思います。

先天性股関節脱臼(発達性股関節脱臼)、先天性内反足、筋性斜頸、O脚、X脚、内旋歩行・外旋歩行、先天性四肢形成不全、骨系統疾患(軟骨無形成症など)、側彎症

なお、デリケートな内容を扱うこともありますし、個人情報の保護の観点からも、個人が特定されないように最大限配慮したいと思います。
都合の悪い記事があれば、必要に応じて迅速に対応したいと考えていますのでご連絡歓迎いたします。

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