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下肢の成長予測について

こんにちは。
今日の話題は少し専門的ですが、ヒトの下肢長(上肢長や身長も)はある程度予測ができるというお話です。

2000年にアメリカのPaley先生が発表された論文は大変インパクトがあったと思います。
ざっくり言えば、成長段階のヒトの成長終了時の下肢長はその時の長さに年齢に対応する係数をかけると求めることができるというものです。
その係数をマルチプライヤー(Multiplier)と呼びます。

その係数の表がこれです。


つまり、生まれた時の下肢長が15センチだったとすると、男の子の場合、生まれた時のマルチプライヤーは5.08ですから、成長終了時の下肢長は

15 × 5.08 = 76.2 センチ

ということになるのですね。
それなら背が高くなりたい一心で一生懸命牛乳を飲んだり、鉄棒にぶら下がったりしたのはなんだったんでしょうか ^^;
それはともかく、このデータが正しいとすれば身長はオギャーと生まれた瞬間に運命で決まっているのですね。

かといって栄養が不足したり、重量挙げを成長期にし過ぎたりなど、成長を妨げるようなことをすれば、負の効果はきっちりでるのではと私は考えています。
従って成長期はしっかり栄養を摂って、適度な運動を心がけましょう!

話が少しそれましたが、この表を使えば、ある年齢での下肢長から成長終了時の下肢長を求めることができますので、今後の成長量を予測できます。
これを応用すれば、将来の脚長差も予測でき、将来どれくらいの長さの骨延長術が必要になるのか、あるいは骨端線閉鎖術を行うならどのタイミングが良いのかも予測できます。

この方法は1回のデータで予測が可能なので、初診の方に今後の治療方針を大まかに伝える際にとても重宝しています。

しかしここで私が”大まかに”と言ったのは、やはり1回のデータでは正確さに不安があるためです。

Moseley先生はStraight-line graph(ストレイトライングラフ)というグラフに各成長段階での下肢長のデータをプロットして何度かのデータを直線で繋ぐことで将来の脚長差の予測や、骨端線閉鎖術のタイミングを導き出す画期的な方法を発表しました。
このようなグラフです。


これはマルチプライヤーよりもずっと以前から用いられてきた古典的方法ですが、私は特に骨端線閉鎖術の時期の予測において一番信頼して使っています。
しかし、複数回のデータが必要なのが欠点ではあります。
すでに骨端線閉鎖術のタイミングに近い年齢で初診で、しかも過去のデータがない方には使えませんが、大抵の場合、骨端線閉鎖術のタイミングまで数年あることが多く、その間に半年に一度くらい来院していただいてデータ採りをしていくと、回数が多くなるほど誤差が少なくなり、より正確に予測することができます。

この方法で予測して骨端線閉鎖術を行った症例は以前にこの記事でご紹介しました。

脚長差の予測には古来いろいろな方法が提唱されてきましたが、私は以上の二つの方法を使い分けています。
Multiplier法で大雑把に見積もり、正確な手術時期の決定などにはMoseleyのstraight-line graphを使っているのです。

最近(2018年7月)に私の方針は間違ってなかったと確信する論文がでました。

Timing of Epiphysiodesis to Correct Leg-Length Discrepancy: A Comparison of Prediction Methods
Makarov, Marina R.; Jackson, Taylor J.; Smith, Connor M.; More
JBJS. 100(14):1217-1222, July 18, 2018.


その骨子は、骨端線閉鎖術を行うタイミングを予測するのにはいろいろな方法の中でMultiplier法が最も不正確であったというものです。
やはり一つのデータからすべてを予測するのは無理があるのかもしれません。
しかしおおまかな予測を立てるのには大変有用ですので、今後も両者の方法を使っていこうと思います。
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小児整形外科医のDr.Kです。
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こどもが病気になると小児科にお世話になると思いますが、手足などの運動器に異常がある場合、一般の整形外科にかかること多いですよね。
実は、こどもの運動器は単なるおとなの小型版ではなく、診断や治療に対する考え方がまったく異なることが多いのです。
まだまだ日本では認知度が少ない、希少種の小児整形外科医師の一人として小児整形外科をより広く知って頂けたらと思い、ブログを始めました。
私が日常よく遭遇するのは以下のような疾患ですので、話題の中心もそのようなものが多くなると思います。

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